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INTERVIEW 前田龍樹(「Garden of Eden」デザイナー)

INTERVIEW 前田龍樹(「Garden of Eden」デザイナー)

2020.12.04 / INTERVIEW

洗練された現代的なデザインと、古くから受け継がれてきた技巧的な意匠とが、ひとつの世界観の中で共存する。「Garden of Eden」の多様な魅力は、デザインと職人を同時にこなす、デザイナー前田龍樹さんの二面性から現れるところが大きいだろう。今回のインタビューでは、前田さんがアクセサリーの道へ進んだきっかけや、4年間過ごしたニューヨークでの経験、コラボレーションについてなど、いろいろとお話を伺った。



Dice&Dice(以下D):前田さんが、アクセサリーを仕事にしようと思った経緯や、その時の思い出を教えてください。

前田龍樹さん(以下前田さん):実は実家が老舗の呉服屋で、小さいころから着物に囲まれた環境で育ったんだよね。だから、自然と実家の家業を継ぐっていうふうに思って育って、小学校ぐらいから、家紋とか染めとか、呉服屋になるための修行を始めてたんだけど、中学校ぐらいから、やっぱり洋服に興味が湧いちゃって、それから洋服の学校にいったんだけど。

D:学校って専門学校ですか?

前田さん:うん。洋服の専門学校。一応、そこで洋服の勉強はしてたんだけど、遊びすぎたというか、途中でちょっと挫折しちゃって(笑)。専門学校って遊ぶために行くような部分もあるじゃん(笑)。

D:確かに、気持ちはわかります。僕も専門学校中退したので(笑)。

前田さん:それから、とにかく何でもいいから、そういうファッション系の業界で働きたいなと思って就職活動してて、一番最初に受かったところがアクセサリー業界だったんだよね。そんな感じで、ほとんどたまたまアクセサリーと出会ったんだけど、それがきっかけで、アクセサリーとかジュエリーに対する価値観が変わっていったね。そうこうしてたら、たまたまニューヨークに住むことになって。

D:ニューヨークですか?



前田さん:そう。その会社の社長に認められて、それでブランドのディレクションとかブランディングとか、ニューヨークでのバイイングを任せてもらうことになったんだよね。週末は蚤の市に出かけて、ヴィンテージのアクセサリーを買い付けたりしてたんだけど、そこでの経験が今のデザインの要素になってたりするんだよね。

D:買い付けをする中で、色々学んでいったということですか?

前田さん:そうそう。やっぱりその時は、洋服のことは何となく知ってたけど、アクセサリーのことはほとんど何も知らなくて。でも蚤の市とか骨董市とかに行くと、むこうのおばあちゃんとかがアクセサリーを売ってたりするんだけど、一つ一つ売っているもののストーリーを詳しく説明してくれるわけよ。「これはこういう人から譲り受けて、こういうストーリーがあって」って感じで。それにとても感銘をうけたね。もともとアクセサリーって、古代からお守りとして使われてきたものだから、アクセサリーならではの歴史とか想いとかが込められてるんだよね。

D:なるほど。ただ売るだけじゃなくて、語ってくれるんですね。

前田さん:そうなんだよ。少なくともニューヨークの蚤の市でやってる人たちは、自分が売っているもの一つ一つのストーリーを伝えられるわけよ。4年間ぐらいニューヨークに住んで、西欧の文化に身近に触れて、出会ったのが、骨董とかアンティークとかヴィンテージって言われるアクセサリーと、そこにあるストーリーだったんだけど、そういう部分を知って、どんどんアクセサリーに惹き込まれていったっていう感じかな。

D:ニューヨークの蚤の市での経験が、アクセサリーをデザインするときの要素になっているということですが、具体的にはどのようなところですか?

前田さん:蚤の市とか骨董市とかで話を聞きながら、いろんなアクセサリーだったり資料みたいなものをいっぱい集めてたんだよね。もともと集めるのが好きっていうのもあって。だから、今手元にビンテージのサンプルとか資料とかが何千点もあるんだよ。それが今のうちのデザインのソースになってるって感じだね。アクセサリーには必ずモチーフっていうものがあって、分かりやすいものだと、星とかハートとかクロスとか。そういうものをたくさん集めてみるとだんだんわかってくるんだよ。例えば、あるジャンルのものに、全然違うジャンルのネイティブのアクセサリーの要素を組み合わせてみるとか。そういうことを日本人の僕らがやるっていうのも面白いと思うんだよね。



D:前田さんのデザインの中には、今では失われてしまった技術を再現して取り入れているデザインもありますよね?

前田さん:うん。そうだね。今はいろんなものが商業ビジネス的になってたりするけど、先人の作ってきたものって、そういうの関係なしに作ってるから。だから、そういう今では作れないような留め具だったり、変わったチェーンとか、変わった素材とかを、今の時代に再現することが、自分たちの技術だったらできるんじゃないかなって思ったりして。だからやっぱり、資料的に、そういう技術が使われているものが手元にあると、見ながら再現できるから。写真でもできるかもしれないけど、現物があるのとないのとでは全然違うんだよね。そういう技術をもっとブラッシュアップして、完成度を上げていくっていうこともできるし。

D:失われた技術を再現することって、かなり難しそうに感じるのですが。

前田さん:それは、考え方次第でできるものできないものってあって。昔の技術より今は工具とかが発達してるから、昔は手でやってたものを、今の工具を駆使して再現することもできるんだよ。

D:できないこともあるんですか?

前田さん:そうだね。だから古い工具もよく買う。例えば、昔ニューヨークで集めた工具を、今日本で工具を作る職人さんに作ってもらおうとすると、とんでもなく高くなっちゃう。当時ヴィンテージのスタンプとか、40個ぐらいセットになったものを3000円ぐらいで買ったんだけど、今それを作ろうと思うと、1個で3〜4万円するんだよ。それが40個だから何百万円もするんだよね。そういうのは面白いよね。ヴィンテージの良さっていうか。現実的に今ではできない技術だよね。



D:ガーデンオブエデンのデザインはヴィンテージな雰囲気もありつつ、モダンな印象も持ち合わせていますよね?

前田さん:やっぱり、ヴィンテージにはヴィンテージの良さがあって、そこから、削ぎ落としたり磨き上げたりして、現代的に仕上げていくっていうのが今のガーデンオブエデンのコンセプトにはなってるよね。でも、それでいてあんまりコンセプトとかテーマに囚われてデザインはしたくないから、だからあえてシリーズという枠をもうけて、シリーズの中で表現していくっていう感じになってるね。

D:ヴィンテージのアクセサリー以外に、何か影響をうけたものってありますか?

前田さん:うーん。例えばフォントだったりかな。昔のスクリプトとか、サンセリフとか。あとはいろんな建築とか建築様式とか。もちろんバウハウスから、アール・デコみたいなものから。そういうデザインの要素を持ったものからは、いろいろインスピレーションを得たりするね。でもそれは、有機的な植物だったりにも言えるから、インスピレーションを得るものはどこでも転がっているんだけど、しいて言えば、やっぱり昔のものから得ることが多いかな。そのルーツは自分がニューヨークで集めた資料とかからっていうのが多いと思うね。

D:前田さんが集めてこられた資料は、アクセサリーとか工具だけじゃないんですね。

前田さん:そうそう。本とかいろいろあって。例えばそういう本のページから着想を得て、ロゴを作ったり、パッケージをデザインしたりしてるんだよね。



D:そういうところも全部、前田さんご自身でやられてるんですか?

前田さん:そうだね。

D:なるほど。前田さんの他にもう一人職人さんがいらっしゃるんですよね?

前田さん:うん。うちの職人は本当に職人寄りだから。俺はデザイン兼職人みたいな感じでセパレートしてやってるって感じなんだけど、職人は本当に職人。漫画と作る事しかやってないから。漫画読みながら作っての繰り返しだよ(笑)。だから、遊びで『BLEACH』の剣とかを作ったりする。等身大の。

D:すごいですね(笑)。

前田さん:子供のために作ってあげたらしいよ(笑)。でも、職人だからそういうのが好きなんだよね。今はアクセサリーの造形が削ぎ取っていくものが多いから、それがやっぱり現代的だし、でも本当は職人からすると足していく方が楽しいよね。やっぱり技術を生かしたいからさ。俺も職人だから本音を言ったら、足していく方が好きなんだよね(笑)。細かいディティールにこだわったりとか。でもそこって、今の時代には必要なかったりするんだけど、もし必要になった時に活かせる技術は積んできたかな。

D:前田さんは、自分がデザインしたジュエリーをどんな風に身に着けてほしいと思っていますか?

前田さん:ルックとかを撮ったりしてるので、一応自分の好みのスタイリングの提案とかはあるけど、アクセサリーって、洋服との合わせとかもあるだろうし、例えば、髪型に合わせて、このピアスを着けてみようとか。このシュチュエーションだったら、これ着けていこうとか。いろいろあるだろうから、それぞれで自由に考えて、身に付けてもらえると嬉しいかな。


■今回のDice&Diceとのコラボレーションについて。



D:前回のポップアップの際には、アップルウォッチバンドを一緒に企画させてもらい、非常に好評を得ました。今回のコラボレーションの商品はどういうものになるんでしょうか?

前田さん:前回のアップルウォッチバンドは定番的にラインナップに残しつつ、また新しいDiceさんらしい提案はなんだろうと考えて、自由にカスタムできるアイテムはどうかなと吉田さん(Dice&Diceディレクター)と話してたんだよ。アクセサリーって実は、名前を彫ったり、石を入れたり、素材を変えたりできる、なかなか自由度の高いジャンルのアイテムなんだよね。だからそういうアクセサリーの自由な楽しいカスタム性とかアレンジ性とかを感じれるアイテムにしようってことで、ダイス型のキューブが回転するデザインにしたんだよ。キューブに賽の目のように、自分の誕生石とかを入れてもいいし、4面あるから自分の好きな数字や文字を彫ってもいい。サイズ展開は、メンズレディースあるからペアリングで、お互いの誕生石を入れあってもいいよね。アクセサリーって、前にも言ったけど、古来からお守りとして使われてきたもので、洋服と違って本当に一生身につけれるんだよ。そういうものだから、カスタムしたり、アレンジしたり、自分の色を加えて愛用することで、本当に思い入れのあるものになっていくんだよね。そういうアクセサリーの面白いところが感じられるものになったらいいなと思ってデザインしたんだよ。





■Col Pierrot(コルピエロ)とのコラボレーションについて。

D:『Col Pierrot』のデザイナー奥田文子さんとの出会いと、コラボレーションするに至ったの経緯についてお聞かせいただけますか?

前田さん:たまたま、同じお店に商品を卸しているというご縁で知り合って、うちの展示会にも足を運んでもらったっていうのが出会いだね。そして、今回ダイスさんとポップアップをするにあたって、何か面白いコンテンツを用意したいなと考えた時に、奥田さんがデザインするコルピエロとコラボレーションしてみたいなと思ったんだよ。でも正直、奥田さんはシャネルやバレンシアガでモデリストのキャリアを積まれたっていう方で、レディースでいうと頂点のような方に、洋服を知らない俺が頼むのもどうかなと思ったんだけど、かなりダメ元で、話だけでも聞いてもらえればと思って連絡したんだよ。



D:沢山の選択肢が考えられる中で、なぜ難しいかもしれないコルピエロとのコラボレーションを選ばれたんですか?

前田さん:やっぱりそこは職人的な発想なのかもしれないけど、キャリアが長いってことは、それだけ技術とか、いろんな引き出しを持たれているんだろうなと思ったからかな。だから、洋服のデザイナーをやっている友人はたくさんいるけど、あえてそういう近い友人ではなくて、高価になってもいいから、奥田さんに作ってもらいたいと思ったんだよね。それで連絡してみて、話を聞いてもらえることになって、アトリエにいかせてもらって、そこで今回の企画を話したんだよ。自分たちらしい、他にはできないものっていうのを考えて、シルバーでボタンとかカフスリンクとかを作ったらおもしろいんじゃないかと思って、それを話したら快く引き受けてもらえたんだよ。ただあちらの条件もあって「その付属のボタンとカフスリンクうちのも作ってください」って言われて。だから今回は、互いに提供しあってるっていうかたちになったんだけど。

D:お互いに満足するかたちでコラボレーションできたんですね。

前田さん:そうだね。やってくれたってことは面白いと思ってくれたのかなと。ほんとトライしてみてよかったなあと思ってるよ。9割くらい断られる覚悟してたから。あとは付属でシルバーボタンを使ってシャツ作ってるブランドなんてそうそうないと思うし、面白いものができてよかったなと思ってるね。

■nella.(ネラ)とのコラボレーションについて。

D:今回『nella.』の小山さんとコラボレーションするに至った経緯について教えていただけますか?

前田さん:経緯としては、もちろん吉田さんの提案があってだけれど、一番はやっぱり、小山さんがガーデンの商品をいつも愛用してくれているということと、小山さんの提案するスタイルに惹かれたというところが大きいかな。小山さんとコラボレーションすることによって、小山さんのスタイルに共感する、こだわりのある大人な女性たちに、もっとガーデンのアクセサリーを見てもらえるきっかけになればなと思って。



D:初めて本格的にヘアアクセサリーをデザインされたと思うのですが、新しい発見や、おもしろいと思ったことはありましたか?

前田さん:もう発見しかないよね。ヘアアクセサリーだと、過去にバレッタとかは作ったことがあるんだけど、今回は全然違う視点からのアプローチだから。ヘアという視点からアクセサリーを考えるっていうのは初めてのことだったから、かなり悩んで何度も試作したけど答えが出なくて、実際に小山さんに会いにきて、話してみてやっとまとまったって感じなんだよね。その甲斐あって、実際にすごい面白いものができたんじゃないかなと思ってる。もちろん、その辺で売ってるようなアクセサリーではないし、ちょっと一線を画するものになるんじゃないかな。正直20年間もやってて、わかんないことなんてほとんどなくなっちゃったんだけど、今回はまた新しい視点からものづくりを考えることにトライできて、わかんないことだらけだったけど、すごく楽しかったね。


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Text/Edit_藤雄紀

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