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HISTORY

デンマークで生まれ育った日系二世の兄弟 井上聡と井上清史。
父が早くに他界し、貧しさと不条理な差別を受けながら幼少期を過ごした彼らは、仕事で成功し、裕福になる為にエゴを剥き出しでスターダムにのし上がった。聡は、広告代理店のインターンから実践的なグラフィックデザインを学び、数年後には、アートディレクターに就任。
清史は、美容業界における世界的な権威"Vidal Sassoon"で史上最年少のアートディレクターになった。

若くしてキャリアのピークを迎えたにも関わらず彼らは決して幸福ではなかった。
ビジネスの規模が大きくなるにつれ、投資家の顔色を伺い、売上に縛られ、自分たち目指すクリエイティブとは掛け離れていった。

思い惑う日々の中、聡の頭にふと浮かんだのは、お金や名声を優先せず、自らの正義を貫き通した父の姿。
「父ちゃんに誇れる仕事をしよう。」と清史と固く約束し、2014年にアートスタジオ「THE INOUE BROTHERS...」を結成した。

程なくして、友人の誘いで南米 ボリビアへと赴くことになった。
その地で目にしたのは、貧困に苦しむ人々と、あってはならない児童労働の実態だった。
聡は、娘が生まれたばかりだった事もあり、生涯をかけてこの問題と向き合う事を心に誓った。
また、土産物店に並ぶアルパカ製品は、滑らかな肌触りとシルクのような光沢があり、素材自体は素晴らしいクオリティーであるにも関わらず、いかにも土産物風情のものばかりだった。
だからこそデザインの力で変えていける余地があると聡は直感した。

ただのボランティアではこの根深い問題を解決することなんて出来ない。貧困という問題に正面から向き合い、素晴らしい素材に二人の専門分野であるデザインを融合させる。
その答えがアルパカ本来の価値を正しく伝える事であり、世界一だと誇れるアルパカセーターを作ることだった。

[参考文献]
僕たちはファッションの力で世界を変える
ザ・イノウエブラザーズという生き方