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「毎日着たい、セットアップ」ORRS / Sw.HERRINGBONE SUIT

「毎日着たい、セットアップ」ORRS / Sw.HERRINGBONE SUIT

2020.09.30 / ORRS

ORRSの品揃えは、店主の陽介さんが本当に毎日着たいと思う物だけを、とことん突き詰めて揃えられています。今回入荷した『Sw.HERRINGBONE SUIT』もそんな商品。陽介さんのこだわりが詰まったセットアップです。職人さんが「大変すぎて大量生産は難しい」と語るほど細かな縫製仕様ですので、今まではORRSでのみの展開でしたが、今回はなんとかダイスアンドダイス分も縫い上げていただきました。短い箇条書きの商品説明では、このこだわりはなかなか伝わりません。なので、今回は陽介さんに直接、このセットアップのこだわりについてお話を伺いました。




陽介さん:まず、今までORRSではずっと太いパンツのスタイルを貫き通しています。その中でも、このセットアップのパンツは「シャツを入れた時にかっこいい」っていうのをすごく考えて作りました。

DD:なるほど、このフロントの部分とかですか?

陽介さん:そうですね。フロントのボタンが2つ付いているのは、単純に強度を強くする意味もあるんですが、あえてボタンを2つ付けて、ウエストバンドに傾斜をつけたり、絶妙なツータックのカンヌキ仕様でよりクラシックに仕上げました。そうすることで、パンツの前たてのディテールが、シャツを入れた時にかっこよく見えるようになりました。

DD:確かに。パンツの存在感は増しますね。



「2つのフロントボタンに合わせて、ウエストバンドが傾斜している。クラシックなカンヌキの仕様も特徴」


陽介さん:こういう細かいところもこだわってやっています。だいたいスーツのジャケットのボタンって一番下は止めないじゃないですか?なので、ジャケットの隙間からチラッとパンツの前たてが見えた時に、ベルトが見えるよりもこういうディティールの方がかっこいいなと思って。

DD:なるほど。これベルト無しで履けるんですね?

陽介さん:そうですね。ベルト無しで履けますね。両サイドにバックルが付いていて、そこでウエストを調整します。このサイドのバックルも普通のものとは違って、デニムの後ろとかに付いているシンチバックってあるじゃないですか?あれをサイドバックルに持ってきているんですよ。

DD:確かに。普通のサイドバックルはもっと簡素な作りですよね。

陽介さん:そうですね。普通にサイドバックルを作る時よりも、かなり手間がかかります。単純に、一つのパンツにシンチバックを二つ付けることになるので、めちゃくちゃ大変なんですよ。でも、こっちの方が断然かっこいいですよね?

DD:そうですね。シャツを入れた時に、目を惹きますね。実用性を兼ねつつ、しっかりデザインになってますね。



「シンチバックのデザインをサイドバックルに使用。製作に手間はかかるが、存在感のあるディティールに」


陽介さん:内側にボタンを6個つければサスペンダーを付けて履くこともできますし、ワニ口のサスペンダーだったらそのままでもいけますね。あと、ベルトがないのは旅の時いいですね。よく飛行機乗る時、ゴツいベルト外す光景を目にしますよね(笑)。これなら軽量化もできるし、スムーズです。

DD:目にしますね(笑)。でも、あれ確かに煩わしいですよね。

陽介さん:そもそもこのセットアップは、自分が旅先でジャケットを着ないといけないシーンが多かったので作ったんですよ。なるべくストレスがないように、いわゆる立体裁断、立体のパターンで袖を前付けしているので、食事をする時に着たまま手を前に出してもめちゃくちゃ楽だと思います。スーツでここまでアームが太いものも基本的に少ないですよね。



「スーツには珍しい太いアーム。立体的なパターンで動きやすさを重視している」


DD:実際着てみたんですけど、めちゃくちゃ楽でした。見た目はきちんと見えるのに、すごく動きやすくて、長時間着たままでも疲れないだろうなと思いました。

陽介さん:そうですよね。そこのバランスは結構何回もやり直しましたね。肩のパッドは入れていませんし、スーツの仕立てですけど裏地は付けていません。やっぱり、背中が二枚だと結構暑いんですけど、これは背中も1枚だから涼しいです。

DD:感覚的には、シャツを羽織っているのとほとんど変わりませんね。



軽さの為に裏地は付けられていないが、各所は丁寧にパイピングが施されている」


陽介さん:あとは、いわゆるスーツの襟の倒し方にしていなくて、カバーオールにしています。もちろんボタンをはずして着ればジャケットのように着ることもできます。見た感じシンプルなカバーオールのノリですけど、よく見るといろいろと自分の好きなディティールが混ざっています。カバーオールだけどウエスタンのディテールを入れてるって感じですね。

DD:ジャケットのポケットもそうですよね?

陽介さん:そうですね。ウエスタンジャケットのポケットって白いパイピングになっているものが多いですけど、ここではパイピングではなく同色の玉縁にしています。ここの玉縁はめちゃくちゃこだわりました。1ミリぐらいのすごく細い玉縁になっているんですけど、「もみ玉縁」でこんなに細い仕様で、かつこの距離でカーブさせるのってとても難しいんですよ。



「ウエスタンのテイストを取り入れたポケットのデザイン。極細の玉縁で、緩やかにカーブしている」


DD:確かにこれは大変そうですね。

陽介さん:そうなんですよ。ジャケットを縫う工場と、パンツを縫う工場は別で、それぞれを得意な工場にお願いしているんですよ。できればパンツもこのスタイルのポケットにしたかったんですけど、パンツの工場さんには、大変すぎてできないと断られてしまいました。ジャケットだけはどうしても絶対にこだわりたかったので「どうにかやってもらえませんか」と、ジャケットの工場さんに無理を言って、やっとやってもらえることになりました。工場さんが言うには、例えば大手のブランドから、この仕様を大量に作ってくれって言われても、大変すぎるから絶対に断るって言ってました。うちみたいな小さなブランドで、量もたくさんできないけど、超こだわって作りたい。そういう熱意が工場さんに伝わって、そこに面白みを感じてもらえたんだと思います。

DD:細かいところですが、ここが普通のポケットになってしまうと確かに味気なくなってしまいますよね。熱意が伝わってよかったですね。

陽介さん:いやぁ本当によかったですね。感謝です。ポケットは形だけじゃなくて、位置も工夫していて、普通のジャケットよりも少し上に上げています。目線を上げて足元をすっきり見えるようにしています。あとは、袖口のデザインもウエスタン調の切り返しにしています。ここも同色の切り返しなので、よく見ないとわかりませんが、ウエスタンなのにしっかりカフスは開く本切羽仕様です。それと、後ろ姿も味気なくならないように、背中にもウエスタン調の切り返しを施しています。



「ウエスタン調の切り返し。袖口の造りは、飾りではなく本切羽仕様」


「バックヨークもウエスタン。同色の切り返しで、静かに主張するところがORRSらしい」


DD:陽介さんの好きな要素が詰まったデザインということですね。

陽介さん:そうですね。僕自身もう何十年も好きな服装がかわらないので、そのなかでとことん突き詰めています。そのままビンテージをリプロダクトしたり、そこから過剰なディティールを抜いたりするだけで、服作りをするのはちょっと面白くないかなと思っています。せっかく作るなら、ちゃんと自分の頭の中にあるデザインで作りたいなと思っています。例えば、ウエスタンだとやっぱりみんな黒を持ってくると思うんですけど、それもうちのお店は海沿いにあるので、少しマリンスタイルなイメージも取り入れようかなと、あえてネイビーにしてるんですよね。そこに僕の好きなウエスタンのカントリーな雰囲気も入れつつ、でも大袈裟にならないようにあくまでもさりげなく、といろいろ考えています。

DD:なるほど。確かにORRSの服って、オーセンティックなんですけど、どこかに必ずORRSらしさを感じます。それが、やりすぎにならないところが絶妙ですよね。

陽介さん:ありがとうございます。難しいですけど、やりがいのある部分ですね。

DD:次は、生地のことを教えてもらえますか?

陽介さん:生地ですね。自分が以前ラルフローレンで働いていた時に、サマーウールにめちゃくちゃ惚れ込んでて、サマーウールをずっと着てたんですよ。いちおう夏用なんですけど、冬でも全然着てて。冬用のウールのスラックスってめちゃくちゃ暑くて、東京に住んでても年間で2、3回しか着なかったんですよ。電車に乗ったり、室内に入ったりすると意外と汗かきませんか?

DD:わかります。外だと丁度いいんですけど、室内に入ると暑くなっちゃいますよね。上着は脱げはいいんですけど、パンツはそうはいかない。



「濃紺のサマーウールのヘリンボーン生地。季節を問わず着用でき、シワになりにくいのが特徴」


陽介さん:そうなんです。だから結構冬場でもサマーウールが活躍するシーンが多くて、季節問わず着れるのはサマーウールかなと。あとはやっぱりサマーウールはシワになりにくいっていうのも利点ですよね。長時間座ったりすると、コットンだったらシワがつくけど、この生地は大丈夫です。高密度のヘリンボーンなので生地の表情もあって最高の生地ですね。やっぱりヘリンボーン好きなんですよね。

DD:これ全然シワになりませんよね。ハリがあっていい生地ですね。

陽介さん:そうでしょ。色は結婚式とかでも着れるように、ちょっとフォーマルというか、上品な感じになるように、落ち着いたネイビーを選んでいます。ただ、普通のスーツよりはカジュアルなので、中にTシャツを着ても絶対ハマるんですよね。でも縫製は手を抜かずにしっかりしています。裏を見てもらったらわかるんですけど、全部パイピングを施して、前立てはスーツの仕様になっています。ぼくもいつも、中にTシャツをきて、Tomo&Coの黒のスニーカーを履いて、ガンガン普段着で着てます。

DD:シーンを選ばずに着れるのはいいですよね。リネンの方はどういう生地ですか?

陽介さん:リネンの生地の方もヘリンボーンなんですけど。ピッチの太いヘリンボーンなんです。でも、これが意外とないんですよ。ミリタリーの軍パンにあるような、細いピッチのヘリンボーンならまだあるんですけど、この太いピッチのヘリンボーンはなかなか無いんです。あとリネンは、サマーウールとは逆にシワが付きやすい素材なんですけど、リネンはその独特のシワが醍醐味ですね。使い込むと、日々表情を変える生地なので、その変化する生地のシワ感とか風合いを楽しみながら付き合っていく。上品な大人の素材って感じです。



「太いピッチが珍しいリネンのヘリンボーン生地。独特のシワ感を楽しんでもらいたい」


DD:なるほど。どちらも甲乙つけがたいですね。

陽介さん:どちらも大好きな生地ですね。

DD:陽介さんがこのセットアップを着る時に、かっこいいと思うスタイリングってどんな感じですか?

陽介さん:そうですね。僕がかっこいいかなと思うスタイリングは、例えば中にイノウエブラザーズのワッフル素材のサーマルをタックインして、シンプルにネイビー×ネイビーのワントーンでコーディネートするのがいいですかね。でも白を着て、コントラストをはっきりさせるのもかっこいいと思います。そして夏はパナマハット、冬はビーバーのハットを被りますね。



「カットソーの上から羽織ったスタイリング。足元がサンダルでも上品さは損なわない」


DD:寒いときコートを合わせるとしたら?

陽介さん:セットアップの上から何か羽織る時は、オーバコート、いわゆるステンカラーコートとかをガバっと着ればなんでも合うと思います。セットアップがダークな色なので、グレー系でも合うし、もちろんネイビーでもいいし。自分はいつもゴム引きのコートを上に着るんですよ。それでも寒いときはモックネックのサーマルの上にセットアップを着ますね。タートルネックとかモックネックとかも、変にキメキメで着るよりは、このぐらい楽なスーツにさりげなく着るのがかっこいいと思います。

DD:ドレスアップしたい時は、どうしてますか?

陽介さん:ドレスアップしたい時、自分はスカーフを使いますね。冬場とかスカーフを垂らすだけでもかっこいいと思うんですよね。例えばペイズリーとか、それだけで華やかになりますよね。その上からコートを着てもかっこいいし。こういうチラッと見えるっていうのを自分はいつも意識していますね。シンプルな洋服だから、大袈裟にやるってよりは、チラッと見えるぐらいをいつも意識して着ていますね。

DD:ありがとうございます。とても参考になります。着飾るというよりも、いかに日常の中に取り入れて、自然におしゃれするかが大切ですね。



「裾の仕上げは品よくダブル。もちろん革靴との相性も良い」


陽介さん:そうですね。自分もいつも服を作る時は「リアルじゃないといけないな」と考えていますね。例えば、ブランドイメージを保つために作る服と、着るために作る服とは、やっぱり違うんですよね。シンプルな服って、その時はあまり響かないと思うんですけど、時間がたつとじわじわくるというか、気付くと手に取ってるみたいな。

DD:こればっかり着てるなって服ありますよね。

陽介さん:ありますよね。実際自分はこのセットアップ普段めちゃくちゃ着てるので。まさに普段何気なく着て一番しっくりくるなっていう服ですね。それでいて、実はこんなのどこにもないなみたいな。そういうものに魅力を感じますね。

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