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Dice&Dice、OVERCOATと出逢う。後編

Dice&Dice、OVERCOATと出逢う。後編

2021.04.01 / INTERVIEW

NYを拠点とするブランド、OVERCOATのデザイナー、大丸隆平さんは福岡のご出身。そんな理由も手伝って、Dice&Diceはいつも大丸さんのことをなんだかNYにいる親戚かアニキのようにも慕っている。コロナ禍もあり、なかなか会えない“アニキ”ではあるが、このたび、ディレクター吉田雄一の声かけのもと、福岡とNYがオンラインで繋がった。NYでバイイングをサポートする市川暁子がモデレーターとなり、大丸さんを囲んでデジタル座談会を開催。今までメディアでは語られたことのなかった福岡時代の貴重なお話やクリエーションのコア、そしてDice&Dice別注のエコバック製作の裏話など、前編と後編2回にわたりお届けする。

前編はこちら



真面目に、2021年春夏コレクションの話など。

市川暁子(以下A) : そろそろ今シーズンのOVERCOATの話に移っていきたいんですが(笑)、2021年春夏のコレクションはもうDice&Diceには入荷してるんですか。

吉田雄一(以下Y) : はい、ちょうど店頭に並びました。

A : 今回注目すべきポイントはやはり、ピーター・マイルズさんという世界的に有名なアートディレクターとのコラボレーションだと思うんです。少し補足しておくとピーターさんは、OVERCOATのロゴタイプのほか、数々のトップメゾンでのアートディレクション、そしてソフィア・コッポラの映画や写真家のユルゲン・テラーなど、錚々たるクライアントさんたちとのお仕事で知られていますね。ピーターさんとはどのように出会ったんですか?

大丸隆平(以下O) : 昔からピーターがデザインしたユルゲン・テラーの写真集とかを見ていて、かっこいいなあ、と思っていたのでいつか会えたらと思っていたんです。そうしたらNY在住っていうのが分かり、知り合いからメールアドレスをシェアしてもらうことができたので、連絡してみました。今をときめくような業界人なので、まず無理だろうな、と思っていたのですが、1ヶ月くらい経ってから「今から行っていい?」みたいな返事が来て、急にピーターが1人でひょっこりオフィスに来たんです。

A : お1人で?

O : そうそう。業界の有名人だから普通取り巻きとかいっぱいいるだろうなと思ったんですけど、ほんとに普通に1人で来て、2時間くらいも、親身に話を聞いてくれて。

A : まあ、2時間も。意気投合したんですね。

O : そうですね。で、「じゃあ一緒になんかやろうよ」みたいな感じで言ってくれて。普通にお願いできるものではない、というのは知ってたのですが、それからだんだん頻繁に連絡を取りあうようになりました。今まで自分もいろんな人に会ったけど3本の指に入る生粋のクリエーターですね。ずうっと作り続けてるし、常に新しいものがないかって探し続けている。そんな人、なかなかNYにもいないと思います。

A : お洋服自体のコラボレーションをしたのは今シーズンが初めてですよね。

O : はい。去年の5月くらいに、NYがロックダウンして僕らも会社に行けなくなっちゃってほんとに困ってた時に、ピーターが連絡してきてくれて「コラボレーションしよっか?」みたいな感じの提案をしてくれたんです。

A : ピーターさんも心配してくださっていたんですね。

O : 「何か助けられることがあったらなんでも言って」みたいな感じで言ってくれて。それで一緒にプリント生地を作ることになりました。それで、彼が作ったアートワークが100枚ぐらい送られてきた。どれもこれもむちゃくちゃ美しいんですけど、「もし気にいるのがなかったらまだまだいっぱいあるから教えて」とか言われて。それで、その中から3つくらい選んでプリント柄に落とし込んで行きました。(現代美術家の)ゲルハルト・リヒターとかがやってるような、スクイージーという技法なんですが。

A : 紙の上にいろんな色の絵の具を出して、刷り流していくという技法ですね、それで美しいグラデーションが現れてくるという。

O : 日本だとピーターのことを知らない人も多いかもしれないんですが、やっぱり作品自体が美しいので五感に刺さる。だから、彼が誰か知らなくてもやっぱりみんな欲しくなるんですよね。それが彼のすごいところ。

A : Dice&Diceのお客さまの反応はいかがですか?

Y : まだ入荷したばかりで。ここ数年、ブランドも大丸さんもどんどんメジャーになられているので、めがけていらっしゃる方も多くいらっしゃいます。そして最近はずっと、僕たちが大丸さんからうかがったお話をお客さんにシェアすることでファンになったリピーターの方も増えてきています。お客様像としては、こだわりのある方が多いですね、本当に服やカルチャーがお好きな方が多いです。



攻めのパターンで行く! DICE別注エコバッグ

A : もうすぐDice&Dice別注のエコバッグも発売されるそうですが、どのような経緯で誕生したのでしょうか?

Y : もともとオリジナルのトートバッグなどは作っていなくて、お買い上げのお客さまには普通にDiceのロゴが入った紙袋に入れて商品をお渡ししていたのですが、最近になってこれって意味あるのかな? と思い始めて。昔はロゴ入りの紙袋を持ってお客さまが街を歩いてくださることが、コマーシャルになるっていう意味があったのですが、今はコマーシャルの手法も変わってきて、INSTAGRAMとかCLUBHOUSEにしても、ソーシャルメディアなど多方面に広がってきている。だから、ちょっと使ったら破れてしまうようなものにお金かける、ってどうなんだろう? って考えたんです。

出張でNYやLAに行くと、みなさん自分のお気に入りのお店のロゴが入ったトートバッグを愛着持って使ってたりするじゃないですか。通勤する時とかにも、オシャレな格好はしてるけどバッグは行きつけのコーヒー屋さんのを持ってる、みたいな。

A : そうですね、NYだとSTRANDみたいな本屋さんとか『NewYorker』みたいな雑誌のロゴが入ってるのもよく見かけますね。

Y : そうそう。あとは日本の方も、よくお土産で買われるかもしれないですが、カレッジもののスウェットとか、アメリカに行くとほんとに自分の卒業した大学のパーカーを誇らしく着てたりする。そういう自分のアイデンティティにまつわるストーリーのある場所のグッズを愛着持って使ってるのがすごいいいな、とずっと思っていたんです。

こんな時代だし朽ちてゆく使い捨ての紙袋ではなく、もっとオリジナリティのあることがやりたかった。初めは普通の形のトートバッグにアーティストさんにプリントの柄をお願いしてやるのもいいかなと考えてたんですけど、ふと大丸さんが作ったらどうなるんだろう? と思って。でも大丸さんにバッグを頼むって失礼かな、とも考えたのですが、やっていただけることになりました。

A:どんなバッグなんですか?

Y : ファーストサンプルを見せていただいてたんですけど、形がめちゃくちゃ彫刻的でかっこいい。あ、こう来たか、大丸さん、っていう。

O : 実はですね、あのバッグの原型というか、抽象的な造形には昔からすごく興味があって、それこそ16歳ぐらいから考え続けていたんです。多分今僕らがやってる仕事って、平面の布が立体になった時にどうなるのか、っていう考察を元にパターンとか洋服を作ってるようなものなんです。それをもうちょっとわかりやすく表現できないかなっていうバッグ、究極的に言えば立体物のようなバッグを作ったんです。

例えば2枚の布があったとして、どちらも全く同じ形で同じサイズの円だったり四角だったりしたら、それを縫い合わせると平面になりますよね。でも、その2枚が円と三角形というような違う形で、でも周囲が同じ長さだったとしたら無理やり縫い合わせることはできて、でも最終形は立体になるんです。そんな実験的な布のオブジェのようなものは福岡にいた頃に良く作っていて、洋服にしたこともあるんですが、最近は全然そういうのをやってなくて。それでDICEさんからバッグの話をもらった時、当時のことがフラッシュバックして、究極的な立体物をまた作りたいなあ、って思ったんです。特に今みたいな時期こそ、ちょっとアバンギャルドなものが必要というか。

A : 激動ですからね、今。時代は。

O : はい。ちょっと攻めたようなものをやりたいな、と。どうしてもコンサバな考え方になりがちだけど、クリエイティビティの面白さって、こういう時にこそ発揮できるって思うんです。

Y : ファーストサンプルをスタッフたちと一緒に鏡の前で持ってみたりしたんですけど、大丸さんのコートと一緒で男性が使っても女性が使っても、どちらも素敵に見えたのはさすがだな、と思いました。大切に販売しようと思います。



さてファッションは、小売はどうなる?

A : エコバッグに関連して環境問題にしてもそうですが、特に去年はコロナで外出ができなかったりしてファッション業界のあり方とか小売のあり方とか、色々考え直す節目の年だったと思うんです。もう新しい服なんていらないんじゃないか? という気分や風潮もあったり。おふたりの立場で今後どうなっていくのか? という展望をお聞きしてもいいですか? 

O : 去年の夏、第二波があった時に東京でポップアップストアを思い切ってやってみたんです。こんな時にそんなことやってる場合か、っていう人もいるだろうな、と思いつつ。ただ、僕らってやっぱりファッションビジネスで生活してるんで、服を作って売っていかないとご飯食べられないし。だから、ファッションは不要不急なんですかって言われると僕らからすると困るわけで。もちろん安全第一で、お越しいただくお客様に対しての感染症対策は最大限やったんですけどね。

会期は8月だったんですが、そのとき38度くらいの炎天下でしかも秋冬物のコート受注会だったんです。だから、友達とか知り合いにだけ少し声かけて久しぶりに話ができたらいいかなくらいに、ゆるく思ってたんですけど、蓋を開けてみたら、ものすごい売り上げだった。初日に来てくれたお客さまが他のお客さまを呼んでくれて、ってどんどん連鎖していったんです。その時、やっぱり緊急事だったとしても大量生産されたファストファッション的なものだけじゃなくて、面白いことや何か新しいものを求めている人たちはたくさんいるんだなあ、って実感したんです。

A : そうですね。この座談会の冒頭でも触れましたが、吉田さんと一緒にOomaru Seisakusho 2に初めてバイイングアポイントメントに行って感動した話。デザイナーの大丸さんから直接コレクションの説明をしてもらうという体験は、普通バイヤーとかプレスのような人たちしかできませんが、ポップアップショップのイベントでは、お客さまも大丸さんに会える貴重な機会ですよね。

O : そうですね。ちょっと昔のブランドだとデザイナーってちょっとお高くとまって、情報をコントロールできたと思うんで、ある意味神秘的な感じでブランディングされてたと思うんですけど、誰もが結局は普通の人間なんですよね。これまで僕は一流デザイナーも含めて、1000人近くは会ってますけど全然みんな普通なんですよ(笑)。中には演じている人もいるかもしれないけど。

だから自分はもっとピュアに、色々隠してもしょうがなかったりするので、いちデザイナーとして出ていってお客様にも会いたいし、どういう方が着てくれてるのかなとか気になるし、そうい触れ合うことの強さとかメリットの方を大切にしていきたい、と考えています。



A : いろんなことがデジタル化されたり、グローバル化も進んだり、なんでもスケールが大きくなっているように感じますが、実はコミュニティは小さく、密度の濃いものが求められている。

O : そう、もっとウェットになってるっていうか。この人から買いたいとか、このお店で買いたい、とかね。何か信用できるルートから買いたいんですよね。吉田さんと初めてお会いした時に印象的だったのは「うちのスタッフって好きになる力があるんですよ」っていうのを熱弁していたことなんです。

お店のスタッフって、全員がバイイングに行けるわけじゃないじゃないですか。第三者が選んできたものを売らなきゃいけない時に「このブランドってどういう良さがあるんだろう」っていうことを追求する気持ちがあるかどうか、ってとても重要だと思うんです。DICEの皆さんたちはほんとにいっつも福岡帰るたびに話したりご飯食べたりする中で色々聞いてくださるから……知らなくていいことまで知ってくれてます(笑)

Y&A (爆笑)

A:モノが溢れている今、選んでいくプロセスの中で信頼できるスタッフから買えるのは安心ですものね。でもDiceも去年はお店が開けられず、Eコマースしかできなかった時期もたくさんありましたね。

Y : そうですね。僕たちはEコマースでもお店と同じように熱く伝えよう、ってコロナになる前からすでにデジタル化コンテンツの準備を始めていたのがラッキーでしたね。その結果、コロナ禍にあっても、ほぼ順調にお客さまに商品をお届けすることができました。

僕、熱く語らない人は大っ嫌いなのですが、今、大丸さんのような積極的に語るデザイナーと、そうでないブランドとほんとに両極に分かれてると思いますね。奇しくも僕らはコロナ禍に巻き込まれたことによって、将来はこうしたいな、て思ってた理想を、早く実現せざるを得ない状況になってしまった。だからスピード感を持って、新たな取り組みもできているのではないか、とも思います。

極論、さっき大丸さんがおっしゃられてたように、作り手の人がお客様に直接話して売るっていうのがいいと思うんです。その場合、セレクトショップはいらなくなる。でも、DiceはOVERCOATだけじゃなく、真剣な物作りをしている方々をこれからも応援したいし、お客さまにもっと色々伝えていきたい。お客さまにとっても作り手にとってもDiceを媒介してもっとコンスタントに多くの人に情報を発信できるよね、とかDiceに行けば何か面白いものがある、って両者から求められれば残っていくわけで。僕たちは絶対にそうなろうと思ってるんですが。

そして最後の最後に宣伝告知!

A : そして、4月に受注会をやるとうかがったのですが。

Y : そうなんですよ。4月23日から5月2日の間になりますが、発表されたばかりのOVERCOAT 2021年秋冬コレクションの先行受注会を開催します。大丸さんも来日されるので、直接接客して頂ける嬉しい機会です。

O : 京都、大阪、東京、そして福岡を全国ツアーします。

A : 楽しみですね~。春爛漫ですね、きっと。私は”オフ会”に私は参加できなくて残念ですが、みなさん楽しんでください!

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大丸隆平
福岡県出身。文化服装学院卒業後、日本を代表するメゾンブランドにパタンナーとして勤務。2006年、某ニューヨークブランドにスカウトされ渡米。2008年、ニューヨークのマンハッタンにデザイン企画会社「oomaru seisakusho 2」を設立。名前の由来は実家のやっていた家具工場で、モノ創りをベースにファッションにおける新しいステータスをクリエートするという理念のもと立ち上げた。スタッフは全員日本人で構成し、MADE IN JAPANの創造力、品質を世界に発信し続けている。現在も数多くのクリエーターに企画デザイン、パターン製作、サンプル縫製サービスを提供する。2015年秋冬シーズンより、ブランド「OVERCOAT」をスタート。2016年、「大丸製作所3」を東京・神宮前に設立する。
(受賞歴等)
2014年 第2回 CFDA FASHION MANUFACTURING INITIATIVE
2015年 第33回 毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞を連続で受賞

OVERCOAT
OVERCOATは「Wearing New York(ニューヨークを着る)」をブランドの原点とし、デザイナーの大丸隆平がスタートしたブランド。設立当初は、THE GREATEST OVERCOATS PROJECT by oomaru seisakusho 2という名で、コートのみのブランドとしてユニセックスによる展開をしていた。数シーズンを経て、現在では、ジャケット、パンツ、シャツ、スカーフ等トータルルックを製作するようになっている。ニューヨークの「oomaru seisakusho 2」ではアポイント制でカスタムオーダーにも対応している。パターンの特徴は、ショルダーラインに工夫を凝らしているところ。プレタポルテでありながら、まるでオートクチュールのように、着る人にフィットする美しいシルエットを築く。サイズ・ジェンダー・エイジを問わないボーダレスなデザインを提案している。素材は、シーズンによって世界最高品質を誇るメーカーと共同開発で製作。古い制服や軍服として使われていたものを復刻したり、ユニークな後加工を施したりすることで、つねにアップデートされたものを提案している。

市川暁子
NYを拠点にファッション、デザイン、アート分野のブランディングおよびコンサルティング業務を手掛ける。ニューヨークコレクションのリビューは20年以上続けており、新聞雑誌媒体の編集や執筆活動も。

吉田雄一
Dice&Diceディレクター。19歳、アルバイトから働き始める。勤続20年を超える最古参スタッフで現在はブランドとの商品企画からショップディレクション、イベントキュレーション等まで、活動は多岐に渡る。

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