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ファッションとアートの間で。OVERCOAT の大丸隆平が現代美術家 リクリット・ティラヴァーニャとの コラボレーションについて語る。

ファッションとアートの間で。OVERCOAT の大丸隆平が現代美術家 リクリット・ティラヴァーニャとの コラボレーションについて語る。

2022.10.20 / INTERVIEW

OVERCOATが美術界の巨匠、リクリット・ティラヴァーニャとコラボレートした作品「COME TOGETHER」が2023年春夏のニューヨークファッションウィークで発表された後、現在、岡山市で開催されている国際現代美術展「岡山芸術交流」で展示されている。古着のコートとOVERCOATではお馴染みのオーニング素材で仕立てたコートを2枚重ねた12着はどれもユニークピースで、ファッションとアートの垣根を超えた存在感を放っている。大丸隆平さんと今回企画キュレーターをつとめた市川暁子との対話。



市川暁子(以下A):今回のコラボレーションの発端は1年前、私がキュレーションしているニューヨークのアートと食のプロジェクトスペースTHE GALLERYにて開催されたリクリットの展示に大丸さんが来ていただいたことでした。最初リクリットに大丸さんを紹介したとき「お、いいコートを着てるね」ってすぐ気づいて、意気投合された感じでした。

大丸隆平(以下O):あのとき、展示されていたリクリットとThe Or FoundationとのコラボTシャツをたくさん大人買いしてしまいました。いつもそんなに買い物しないんだけど、The Or Foundationの活動にも共感して。その後、彼が教鞭をとっているコロンビア大の課外授業のプログラムで学生さんたちを連れてアトリエにも来ていただき、OVERCOAT を教材としていただきました。



A:The Or Foundation(https://theor.org)はアフリカのガーナとアメリカを拠点とするN P Oで、ファッション業界で排出される衣料廃棄物の問題について取り組んでいます。2000年代以降台頭したファストファッションブランドによる発展途上国での大量生産や、デジタル化によって加速化する消費動向などから発生した過剰なアパレル製品。これらがアフリカのガーナへ大量輸送される中、社会的不平等や環境問題を引き起こしていることを告発している団体です。

私もジャーナリストとして、またいち消費者として長年ファッション業界と関わってきて、The Or Foundationによるリポートでガーナの海岸線を見渡す限り投棄されている服の山の存在を知ったときは本当にショックでした。それで昨年 THE GALLERYの展示でリクリットたちと一緒にThe Or Foundationがガーナに送られる前に回収した古着のTシャツを使用した作品を制作しました。

O:今回はThe Or Foundationを通じ、古着のコートを集めてもらい作品としました。ファッションブランドとしてサスティナビリティに取り組んでいるか? というのは最近よく聞かれることですが、安直な気持ちでできることではない、と考えています。

A:もともとOVERCOATは1シーズンで飽きられ、捨てられてしまうようなものづくりはされていないですしね。ファッション業界におけるサスティナビリティ、S D G Sのテーマ自体が流行化しているような傾向は私も気になっています。そんな中、今回リクリットとのコラボレーションは、現代アート的なアプローチで社会への問題提議を行うシンボリックなプロジェクトになったのではないか、と感じています。



新旧2着のコートが融合して
1着の作品になるまで


A:今回の作品「COME TOGETHER」はコートにリクリットがまずシルクスクリーンで“TOMORROW IS ANOTHER DAY”や“ FEAR EATS THE SOUL”などの言葉をプリントするプロセスから始まり、その後、大丸さんが最終形に仕上げていく、という手順で完成しました。12着のコートにはどれもシュレッドの技術が使われています。

O:シュレッドは書類などの紙類や布などが廃棄されるときに使われる典型的なテクニックです。古着は誰かが捨てた服ですが、今回はシュレッドの技法を廃棄ではなく、あえて造形するために使いました。OVERCOATではずっと使い続けているオーニングの素材で仕立てたコートを重ねてシュレッドすることにより、物質的、また精神的にも融合している、というところを見てもらえたら、と考えました。



A:2着のコートがひとつの作品として“ COME TOGETHER”している、ともいえますね。

O:そうですね。タイトルはリクリットがつけたものですが、ビートルズの有名な曲もありますし。マイケル・ジャクソンら色んなアーティストもカバーしていますね。

制作にあたってはまず1/2のサイズで古着コートのミニチュアを作りました。これは僕が頭の整理をするためにやっている作業ですが、土台となるコートの構造線がどうなっているかを検討するためのステップです。今回のプロジェクトは構想から完成までにかなりの時間を費やしています。自分のデザイナー人生の中でもこんなにかけたことないくらいに。



服とはまず着たい、という衝動を
持ってもらえるかどうか。


A:今回のプロジェクトでは制作物はアートとして発表することを前提に作られていましたか? 

O:アートかファッションかは特に関係ないですね。ものづくりにあたってのテンションはいつもと同じでした。

A:もしもアートを作るとしたら、最終的に作品は着られないものになる可能性もある。古着のコートを材料とした彫刻的な制作物とすることもできます。制作物がファッションでなくアートにカテゴライズされた途端、アンタッチャブルなものになる。ギャラリーや美術館に展示されて、触ったり、着たりはできないものに。

O:僕は人が着ないことを前提にものづくりはしませんね。服を作る以上、着る人がいることは想定していて、誰かが着ることで完成する、と思っています。



A:リクリットのアートのコアにある関係性の美学。タイカレーを作ってふるまったり、Tシャツにスローガンをシルクスクリーンプリントしたりといったアートパフォーマンスは、いつも誰かが参加することによって完成しますが、同じ文脈にあるともいえますね。

O:自分が服を作るとき外からは見えない仕様、例えば内側の布の色を変えたり、ゆとりを持たせたり、着た人しかわからないような工夫をすることがよくあるんです。着る人と僕がキャッチボールするようなコミュニケーションのディティール。

服って、まずは着てみたい、と思わせられるかどうか? がいちばん大事。仕事に着ていって、その後食事に行って、みたいに10時間以上着ていて心地いい服もあれば、今回のプロジェクトで作ったコートのように10秒でも10分でも着てみたら何かを考えさせられたり、非日常を味わったりしてもらえるような服もある。着たいという衝動、着たいという興味を持ってもらえなくなるから、服は軽んじられ、捨てられてしまう。

もともとアートの語源はラテン語のarsで、人間の技のことを指していたとか。アートという言葉も近代までは芸術というよりはむしろ技術的要素を指すものだったそうです。自分も技術屋の端くれとして、自分の腕とアイディアを使った表現で着る人に共感してもらいたいと願っています。



岡山芸術交流2022
会期:2022年9月30日〜11月27日
https://www.okayamaartsummit.jp/2022/

OVERCOAT FALL WINTER 2022 LAUNCH EVENT AT DICE&DICE
会期:2022年10月22日〜10月24日
会場:ダイスアンドダイス

大丸隆平
福岡県出身。文化服装学院卒業後、日本を代表するメゾンブランドにパタンナーとして勤務。2006年、某ニューヨークブランドにスカウトされ渡米。2008年、ニューヨークのマンハッタンにデザイン企画会社「oomaru seisakusho 2」を設立。名前の由来は実家のやっていた家具工場で、モノ創りをベースにファッションにおける新しいステータスをクリエートするという理念のもと立ち上げた。スタッフは全員日本人で構成し、MADE IN JAPANの創造力、品質を世界に発信し続けている。現在も数多くのクリエーターに企画デザイン、パターン製作、サンプル縫製サービスを提供する。2015年秋冬シーズンより、ブランド「OVERCOAT」をスタート。2016年、「大丸製作所3」を東京・神宮前に設立する。
(受賞歴等)
2014年 第2回 CFDA FASHION MANUFACTURING INITIATIVE
2015年 第33回 毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞を連続で受賞


市川暁子
NYを拠点にファッション、デザイン、アート分野のブランディングおよびコンサルティング業務を手掛ける。ニューヨークコレクションのリビューは20年以上続けており、新聞雑誌媒体の編集や執筆活動も。


インタビュー第3弾・前篇「福岡の“俺ら系”クリエーターズ 10年以上ぶりの再会、からのコラボレーション」

インタビュー第3弾・後篇「福岡の“俺ら系”クリエーターズ 10年以上ぶりの再会、からのコラボレーション」

インタビュー第2弾・前篇「OVERCOATの大丸さんと「穴」についての哲学的な話。」

インタビュー第2弾・後篇「パンダTを着た“奇才”ランナー 大丸さんはこれからも走り続ける。」

インタビュー第1弾「Dice&Dice、OVERCOATと出逢う。」

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